前回はいわゆる「ドレミファソラシド」の音階であるメジャー・スケールとそのスケールから出来上がるメジャー・ダイアトニック・コードについて学習しました。
非常に明るい響きを持つメジャー・スケールでしたが今回はそれと対照的に少し切ない響きを持つマイナー・スケールを取り扱います。
マイナー・スケールには「ナチュラル・マイナー・スケール(自然的短音階)」、「ハーモニック・マイナー・スケール(和声的短音階)」、「メロディック・マイナー・スケール(旋律的短音階)」の三種類があります。
それではその成り立ちとそこから出来上がるダイアトニック・コードを見ていきましょう。
ナチュラル・マイナー・スケール
メジャー・スケールを展開して6度をトーナル・センターとする、言い換えればメジャースケールを第6音から始めるとナチュラル・マイナー・スケールが出来上がります。
以前の記事でも書きましたがメジャー・スケールとマイナー・スケールの比較は1度と6度で行わずに同一トーナルセンター上で比較した方が差異を確認できますので基本はCマイナーのキーで説明をしていきます。
ハーモニック・マイナー・スケール
先のナチュラル・マイナー・スケールはトーナル・センターに向かって全音下方からの解決になるのでCマイナー・スケールはCメジャー・スケールと比べてスケールを上昇した際のC音の終始感が弱くなります。
そのため第7音とトーナル・センターとの間を半音程とし、終始感を強めたスケールが出来上がります。
この長7度の音はトーナル・センターに半音で繋がり、終止を導く音なので導音(Leading tone)と呼ばれます。
導音を含んだこのスケールはドミナントの和声がⅤ7となりハーモニック・ケーデンスが形成されるので、和声的短音階=ハーモニック・マイナー・スケールと呼ばれます。
ケーデンスに関しては次回の記事で扱います。
メロディック・マイナー・スケール
先のハーモニックマイナーの短6度と長7度の音程は増2度であり、これは音階的に歌い辛くなります。
そのため6度をさらに半音上げて長6度としたスケールが出来上がります。
このスケールはメロディー・ラインの歌いやすさを考慮したスケールであるので旋律的短音階=メロディック・マイナー・スケールと呼ばれます。
メロディック・マイナー・スケールは下降系で用いるとメジャースケールに近くなってしまいます。
そのため過去ではメロディック・マイナー・スケールの下行系ではナチュラル・マイナー・スケールを用いるという説が使われていました。
ピアノをやっていた方であればハノンのスケール練習を思い出していただくと良いでしょう。
ですがポピュラーミュージックにおいてはメロディック・マイナー・スケールは上行系も下行系も区別なく使われていることが多いです。
マイナー・ダイアトニック・コード
それでは三つのマイナー・スケールにスケール内の音を三度ずつ堆積させた4和音を作ります。
すると以下のように21個のコードが出来上がります。
しかし、この21個の中には重複しているものとメジャー・ダイアトニック・コードに属さなければいけないコードもあるのでそれを省くと以下の14個がマイナー・ダイアトニック・コードとして扱うことができます。
Ⅰm7、Ⅱm7(b5)、bⅢM7、 Ⅳm7、Ⅴm7、bⅥM7、bⅦ7
ⅠmM7、bⅢ+M7、Ⅳ7、Ⅴ7、Ⅵm7(b5)、Ⅶdim7
Ⅰm6(Ⅵm7(b5)の転回形のため)
コードの機能となりますがマイナー・ダイアトニック・コードに関しては前回メジャーで扱ったトニック(T)、サブドミナント(SD)、ドミナント(D)の他にサブドミナント・マイナー(SDm)とドミナント・マイナー(Dm)という機能が存在します。
また、マイナーにおいてはトニックではなくトニック・マイナー(Tm)という名前で取り扱います。
以下に分類を示します。
Tm …Ⅰm7、ⅠmM7、Ⅰm6、 bⅢM7、bⅢM+7、Ⅵm7(b5)
SD … Ⅳ7
SDm … Ⅳm7、Ⅱm7(b5)、 bⅥM7、bⅦ7
Dm … Ⅴm7
D … Ⅴ7、Ⅶdim7
まとめ
今回と前回でメジャー・スケールとマイナー・スケールにおけるダイアトニック・コードを見てきました。
個人的な観測としてメジャーダイアトニックコードまでは即座に言えてもマイナーダイアトニックコードとなるとすぐには言えなくなってしまう人が多い気がします。
そういった点ではマイナースケールとそのダイアトニックコードというのは音楽理論の初心者と中級者の間の壁となりそうですね。
次回はダイアトニック・コードの機能についてのお話をさせていただきます。